『天の光はすべて星』フレドリック・ブラウン

買った理由を恥じる必要はないのだ、と2年前の自分に言ってやろう。と、言うわけで『天元突破グレンラガン』最終話のサブタイトルの元ネタを読了。『エヴァ』(世界の中心で愛を叫んだけもの)、『トップをねらえ2!』(あなたの人生の物語)に続き、これで3つ目だ。あとは初代『トップをねらえ!』とナディアだが、ナディアは見てないんだよな。


購入した文庫本には新刊案内の折込紙が挟まっていて、その時のハヤカワ文庫のキャッチフレーズが表に大きく書いてあった。曰く、「強い物語。」
この『天の光はすべて星』は、まさにそのキャッチフレーズにふさわしい名作であったなあ、と言う感想。あまりにもストレートで、力強く、夢に満ち、読み手の心を引っ張りあげる。正拳突きのような小説だった。
グレンラガンしか知らなかった頃は、このタイトルは最後の光景にぴったりマッチするから選んだだけなのだろう、程度に考えていたけど、全く勘違いだった。まさにグレンラガンの最終話に飾るには、これの他に無いほどの一作だ。物語の展開ではなく、その思想において、グレンラガンはこの小説の息子である、と思う。

主人公は元宇宙飛行士で義足の老人。当然、すでに宇宙へ行くことは出来ない身上ながら、その人生のすべてを宇宙に魅せられ続けた男は、もう一度重力から解き放たれるべく、人も、技術も、国をも動かして前進し続ける。目的を為すために、何一つためらうことなく走る男のタフネスさに、「格好良いとはこういうことさ」と言う想いを抱かずにはいられなかった。

それと同時に、この話の結末はとても真面目なものだ。作者の性格が真面目なのか、シニカルなのかは判らないが、ただのマッシブな物語ではないその終焉に、「SFの礼儀」のような物を感じた。強さには責任が伴うと言ったのはスパイダーマンだっけか。あと、あれ。『銃夢LastOrder』のケイオスの話。夢を見て、夢を見させたことの責任と言うものを、フレドリック・ブラウンはその筆でもって書ききったのだと思う。

巻末に、中島かずき氏の解説が載っていた。今回の復刊は当然グレンラガン絡み。フレドリック・ブラウン石川賢など、多くの過去の螺旋力を未来に引き継いでいってくれるこの人たちは、本当に頼もしいなあ。