大河ドラマ「平清盛」 第11話『もののけの涙』

(あらすじ)
義清の出家により、彼を心の拠り所としていた崇徳帝は深い絶望に打ちひしがれる。清盛はそんな崇徳帝に、似通うところの多い自分の境遇について語る。
清盛の言葉を受けて奮起した崇徳帝は、鳥羽院と得子から実権を奪い取るべく行動を開始するが、得子の奸計には及ぶことなく、さらに政治から遠い立場に追いやられてしまう。
得子は崇徳帝の行動を逆に好機とし、自分の子である躰仁親王天皇の座に据えることに成功。ついに国母の地位に上り詰めるのであった。

朝廷の動きについては、当然平氏一同も目を光らせており、今後の動勢についてどの一派に付くべきかを論議する。
さまざまな意見が飛び交う中、清盛は冷笑を交じえながら「面白いように生きればいい」と放言する。弟の家盛からは「嫡男としての自覚が足りない」と窘められ険悪な空気となるが、母の宗子と兄弟それぞれの妻が楽器演奏での余興を始めたことにより、場は収まる。
忠盛は妻たちの演奏を聞きながら、「異なる楽器が互いの音を補うように、一族のそれぞれが足りない部分を補い合って一族の結束を固めるべきだ」と、清盛や家盛を始めとする一門に語り聞かせる。

忠盛が従三位に昇格したこともあり、一門にとっては順風満帆、かつ、穏やかな日々が続いていたが、そんな中で凶事が訪れる。清盛の妻・明子が流行り病に倒れたのである。清盛は僧を呼び寄せ、必死に快復の祈りを続けるが、想い実らず明子は帰らぬ人となる。怒りと哀しみのあまり、狂ったように僧へと刀を振り回し、仏を痛罵する清盛。その姿を見て忠盛は、清盛の中に潜む白河院の「もののけの血」に、改めて気付かされるのだった。

(感想)
怨霊 ストク上皇が1体出た!

  • 権力争い開始→5分で敗北の辺りから、崇徳帝(上皇)役の井浦新さんの演技が神懸ってくる。具体的には目力と声質が怨霊じみてくる。このあと保元の乱まで、ただただ憎しみのオーラ力だけで駆け抜けていく崇徳さんなわけで、制作陣は本当に良い人を捕まえてきたなと感心していた。
    • 調べたら、この人の旧芸名ARATA。あ、ピンポンのスマイルじゃないか。全然気づかなかったぞ。

ワイルド義朝珍道中

  • 東国で名を挙げている最中の義朝一味が面白すぎる。「よし心得た! 床を敷け!」な義朝と、どう見ても山賊の副頭領な正清と、なんだかよく判らないがあくどい顔をしているきたろう。
    • 「この時に仕込んだ子が、私の兄である朝長となるのである。ちなみにこの一年前に、長兄である義平も仕込み済みなのだ」と、頼朝のナレーションでさりげに語っている。義平はあんなに濃いキャラだったのに、出生から最期までえらくあっさりした扱いだったな。
  • 一方、京でお留守番チーム。ずけずけと口やかましい由良ちゃんに、つい為義パパがキレて怒鳴ったら由良ちゃん泣いちゃってパパ困るの図。横で「あーあ、泣かしちゃった。どうすんですかコレ」な顔をしている通清も合わせて、お前ら全員萌えキャラか。
    • ここでもまた「母は最初から最後まで報われぬ御人であった」とアレなナレーションを挟む頼朝。この時は何とも思ってなかったが、今現在(28回『友の子、友の妻』まで鑑賞済み)だと既に作中で頼朝がバリバリ登場しているので、ナレーションもキャラクターとして感情移入して聞こえてくる。「言外に色々と言いたいことはあるんですけどね。取りあえずは語りを進めますよ。ええ」感。

欠けていく平氏と満ちていく清盛

  • 平氏一門「崇徳帝陥れられたけど、上皇側、法王側、摂関家、どこに顔を売っておくのが一番いいのかね」清盛「うーん!面白い方!」 中二病がひどすぎて、もはや家盛以外誰も叱ってくれないレベル。
  • 宗子さんと明子さんと家盛の奥さんのリサイタルを聞いて、忠盛パパが「この楽器の演奏のように、足りない部分を補いあって強い平氏を作ろうぜ!」と纏める。この頃の清盛は圧倒的に色々なものが足りなかったが、それを補ってくれる優秀な家族らが居た訳だ。忠盛は当然として、忠正もいるし出来た弟の家盛に良妻の明子、と。清盛自身が未熟でも、彼らが居るから平氏は盤石だよ、と言う。
  • しかし、この回で明子は退場する。この先、家盛も、忠盛も、忠正も皆いなくなっていく。思い返せば前回も義清が退場しているわけで、保元の乱の終了まで、清盛は彼の未熟を補ってくれていた多くの人間を失い続け、それと引き換えに成長していったわけだ。平治の乱終了時には清盛自身が押しも押されもせぬ大黒柱になっているわけで、そう思えば初期のしょっぱい中二清盛の感慨深さは計り知れない。ここまで徹底的に成長を描き続けた大河ドラマって珍しいんじゃないですか。
    • で、28話で義朝を失った時点で、恐らく清盛はキャラ的に完成。スタープラチナくらいに成長しきったのじゃないかと予想。あとは子に引き継いでいく話にウェイトが移っていくような気がするな。まあ重盛は死ぬけど。

明子退場

  • で、今回、その失われる役を仰せつかっている明子さん。
  • まあ、アッサリといえばアッサリ。元が良く出来た奥様だったので、本人自身は立つ鳥跡を濁さずな感じで、必要な描写だけやってサクッと死んでしまったような気がする。
  • いろいろとやらないといけないこと多かったせいもある。祇園闘乱事件に備えて清盛に神仏を憎悪させておいたり、後妻にしてメイン妻の時子を絡めさせたり。
  • どうしてもラストの坊さんキック大暴れがあんまり過ぎて、前向きな感想は出てこない。盛国の「恨むなら薬を民に与えてくれない朝廷を恨みましょう!」もよく判らんし。何故そこで焚きつける。どっちかっていうと、この先しばらくは朝廷不信よりも神仏不信のほうが根深かったよね。
  • 全てもののけの血が悪い。一言でそう云い切ったら、当代の白河の落とし胤たちは眉を逆立てて怒るだろうか。しかしこの清盛のあばれはっちゃくぶりをみて、忠盛の心に湧き上がった言葉は、これに尽きると云っていい。
    • よくない。
  • 明子さんの場合は、時子さんへのバトンタッチ感がどうしても強いからな。もう次回にはプロポーズしちゃうわけだし。先が詰まってる感やばい。

と言うわけで、次回は義朝復活回にして璋子退場回にして最低のWプロポーズ回と名高い第12回「宿命の再会」です。早めに見たい。出来ればペースを上げてって、本放送の最終回と合流する位のつもりで見たいのだ。