『ドラマスペシャル 柳生一族の陰謀』

皆大好き柳生一族の陰謀が、何故か21世紀になってリメイクされたよ。春だったか夏だったかに発表されてからずっと楽しみにしていたよ、という事で、他にやらなきゃいけないことはいっぱいあるけど先に感想を書こう。

あらすじ
徳川二代将軍秀忠の死を皮切りに、一挙に表面化した跡目争い。長子だが愚鈍な家光か、弟でありながら聡明な忠長か。激化する権力闘争の中には、密かに蠢く柳生一族の姿があった。

原作を踏まえた上での感想
もちろん故・深作監督の原作は素敵過ぎる傑作であるので、今回のリメイクの話を聞いたときは驚きと不安に襲われた。「いや、あれは越えられないだろ。て言うか表現できないだろいろいろ」って感じで。
見終わってみれば、やはり物足りない点はあったものの、総合して素晴らしいできであったと思う。中途半端にアレンジされるのが一番怖かったが、その部分がかなりよかった。のはいい意味で裏切られたなあ。

以下羅列で。ネタバレこみこみ。

  • 暗君家光と名君忠長。忠長はどうしてもシグルイのイメージが強すぎるので、聡明で義があって家族&部下思いな彼にはどうしても違和感がある。対して家光は修羅の刻とか荒山徹の刷り込みが強すぎて元々暗君だよねなイメージ。暗君VS暗君の泥沼じゃなくて良かった良かった。いや勝ったのは暗君だから良くは無い。
    • でも思い返してみて、自分の忠長とのファーストコンタクトは山田風太郎先生の『忍びの卍』に出てきた名君忠長だった。悪印象ってのは強く残るものだなあ。
  • そして現れる宗矩 act by 松方弘樹!初代では家光役だったのに!出世したなあ!徹頭徹尾、超黒くて幸せになる。

ここまでを放送翌日に書いたところで余裕が無くなって、一週間経過。録画しておいたのをもう一回見て感想を書き直そう、と思っていたら家族に録画消されてた…。

気を取り直して。(ここから10/5)

  • 上川十兵衛はちょっと顔が優しすぎるなあ。と思っていたけど片目を失ってからはそれなりに締まって見えたので、眼帯は偉大なアイテムだと思う。新聞の予告で「結ばれぬ運命の愛!」的なことが書かれた上で阿国とラブいムードだったので、もしや忠長との三角関係か!とか一人盛り上がっていたがそんなことは無かった。
  • 柳生ブラザーズの扱いの悪さは相変わらずと言うか、原作通りと言うか。茜って何のためにいるんだろう。
  • そして烏丸中将。元々強キャラだったが、面白キャラ優遇補正かなんかの都合で中ボスからラスボスに格上げされていた。
    • 柳生剣士をおじゃる口調で一蹴し(ここまで原作どおり)
    • 十兵衛の片目を奪い(ここからおかしい)
    • 「まともにやったら勝てない」から、中盤に爆弾で吹っ飛ばされてしまう。(おかしい)
    • でも生きていた。
    • ラスト、十兵衛と最後の戦いに。柳生新陰流奥義無刀取りの前に敗れ去る。
  • あと、渡辺半蔵とか。原作で丹波哲郎がやってた役だっけ?途中で新陰流の使い手で、宗矩と因縁があることが発覚。宗矩と絡む他の新陰流ってことは、疋田文五郎だろうか?
  • 彼や烏丸中将を始め、他にも阿国一座の雑魚とか女形の刺客とか、対決がバラエティ豊かで楽しかった。特に十兵衛が戦う時は「気がついたら既に敵が斬られている」みたいなテレビ映えしなさそうな倒し方ばかりなのが格好いい。攻守一体で避けると同時に実は斬っている的な。美しい。無刀取りはどうかと思ったけど。
  • 後半阿国を、十兵衛が根来の里に連れて行った時点で最後の展開が読めた。で、なるほどなーと思った。原作の方だと、十兵衛が怒りに目覚めて最後の凶行に及ぶのは「里の仲間たちを皆殺しにされたから」だけど、それだけだと動機が弱いと製作の人は判断したのだろう。なので、「里の仲間たちを皆殺しにされた上に愛する女も殺されたから」という原哲夫風味な理由に。なんという匹夫の剣士。この最後の行ないに説得力を持たせるために、阿国とぬるいラブストーリーを展開していたのかと思うと、この監督は堅実な人だなあと感心するほかない。
  • あと、春日局が家光の実母だった!とか。こういう、原作の重箱の隅を説得力で埋めていこうという行為に原作に対するリスペクトというか、愛を感じたりする。気の利いた同人活動みたいな。
  • そして、ラスト。ここまで原作に愛を持って応えたのだから、最後はもちろん原作どおりですよ。2008年の地上波で首チョンパもやっちゃいますよ。夢じゃ夢じゃですよ。
  • 有り難う。DVD出たら買います。


書き忘れた部分も沢山ありそうなので、後から書き直したりするかも。
なんとなく見ててコブラ部隊のガイドラインを思い出したが、

宗矩「この先にはわが息子たちとURAYAGYUが待ち構えている。さぁ、こいっ!」

友矩「ようやく捉えたぞ!我らはザ・ムネノリの息子達…俺はザ・サモン!おまえにこの世で最高の若竹をやろう。いくぞっ!」

ここまで思いついたところで、ザ・ジューベーの憤怒がザ・ムネノリに向いてしまったので続きは断念した。