それでも僕はやってない

今なお社交ダンスの番組を続けさせている傑作映画、『shall we ダンス?』の周防正行監督が送る、社会派裁判劇。社会派って何だ?

  • あらすじ

痴漢の現行犯(冤罪)で逮捕されたごく普通の青年が、無実を認めてもらうがために逮捕、拘留、起訴、裁判とあれよあれよと激流に飲み込まれ、人生を狂わされていく過程を描いた映画。

  • 第一の感想

各所でえらく評判が良すぎたので、全く不安を感じずに鑑賞に臨んだのだが、期待以上の傑作であった。

女子中学生に痴漢行為をしたとして逮捕され、しかし「やっていない」と主張し続ける主人公に対し、冷たく辛く当たる周りの他人たち。
主人公の言葉を信じ、健気に出来る限りのことをしようと動く、肉親や親友、昔の恋人。


観客として見ている自分たちは、主人公が痴漢などしていないことを知っている。だからこそ、主人公の親友と同じように、ろくな調査もしない刑事、証言を信じようとしない検察、勘違いで主人公を苦しめる女子中学生に対して、憤りを覚えることが出来る。
だが実際に、自分がこの事件に何らかの形で関わることになった時、主人公を擁護できるだろうかと考えると、それは出来ないように思う。真実が判らない状況で泣いている女の子が居るのに、疑われている男に対し同情の目を向けられるとは思えないのだ。
同じことが、話に出てくる刑事や検察たちにも言える。彼等は彼等の正義に従って動き、信念を持って主人公に立ち向かっているに過ぎないのである。
この映画に、『悪人』はいない。だからこそ、見ている自分たちは湧き上がる憤りのぶつけ所が無いことにとまどい、言いようの無い不安と恐怖感に囚われる。


この映画の最初の感想は、「正義はどこに?」だ。



注意!ネタバレ文章です







回答として与えられているのが、「正義はそこかしこにある」ということ。そして「正義は万能ではない」と言うことなのが、なんともやるせなくて仕方が無い。


第二の感想に続く。