『鳳凰の黙示録』荒山徹

あらすじ
日本においては戦国時代末期。時の李氏朝鮮王・光海君は、自分の地位を脅かす腹違いの弟、永昌大君の暗殺を子飼いの女性剣士集団『七琴剣』に命じた。しかし永昌大君の元にたどり着いた七琴剣たちは、彼の天性のショタっ気に当てられ、逆に彼を守るために尽力することに決めたのだった。
彼女らの裏切りを知った、光海君が持つもう一つの暗殺集団『魔別抄』は、彼女ら自身も抹殺対象に含めて動き出し、次々に彼女らを屠っていく。最後に生き残った七琴剣最年少・碧蓮は、見事永昌大君を守りきることが出来るのか。少年王子の言う、正統な王位継承の証である、『鳳凰卵の鍵』の正体とは!日本の歴史をも絡めて動き出す、鳳凰と龍の因縁の物語が今、描かれる!

感想
荒山先生の持ちネタの一つ、『韓流+特撮+歴史』活劇。処刑御史とかと同ジャンル。相変わらずこのジャンルの話はいい意味で酷い。常々、荒山先生は一度、ニトロプラスエロゲーの原作を引き受けてみるといいんじゃないかなと思っていて、『鳳凰の黙示録』はその最たる例だった。
以下羅列で。軽いネタバレを含む。

  • 相変わらず、隆慶一郎先生における秀忠のような扱いを受け続ける李氏朝鮮王・光海君。小心残虐非道。
  • 希少種であるところの正義韓人・永昌大君。史実では8歳で光海君によりオンドゥル焼きで謀殺されたらしいが、今作ではそこを七琴剣のお姉さんたちに助けられる。健気な良い子としか言いようがないというか、それしか特徴がない。
  • 七琴剣が、ただの超絶剣術の使い手なだけなのに対し、魔別抄の方は朝鮮妖術ばりばりの変態集団。なので、冒頭100ページくらいで七琴剣はほぼ全滅する。相変わらず名前有りキャラがゴミのようだ。
    • 一人目がいきなり、バジリスクに出てきた甲賀弦之介の瞳術使い。二人目がマグマグの実の能力者ですよ。刀一本でどうしろと。
    • その後も虎女、コウモリ男、ヘビ女、カッパ、月面ワープ人間(&月の巨大怪獣召還)エトセトラエトセトラと続く。特撮趣味も大概だ。
  • それでも一人生き残り、変態どもと戦いながら永昌大君と逃避行を続ける美少女ツンデレ剣士碧蓮ちゃん。文字にしてみると本当に頭悪い物語だな。

物語の中盤以降、我らが碧蓮ちゃんは日本から来た剣士と恋に落ちたり日本に渡ったり、あと秀頼が物凄かったりする。
荒山先生は、なんだか知らないが男女の恋愛は過程をすっ飛ばして結果だけ残すことが多くて(処刑御史とか百合剣とか)、何故か物凄く記号的に描く。照れくさいのだろうか。男×男の時は情感たっぷりなんだけどなあ。
妖術使いとのバトルは相変わらず格好良く、いろいろギミックとかも駆使しながらそれなりに緊張感もある仕上がり。
後半が随分おとなしかったのと尻切れトンボだったのがマイナス点だけど、全体的にゲラゲラ笑いながら読めばいい感じだったので、まあ暇つぶしには最適でした。真剣に読むもんではないと思う。

鳳凰の黙示録

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