『ジエンド 炎人―The last hero comes alive』村枝賢一

 マガジンZのナイス企画、『ヒーロークロスライン』の看板作品。周りの人間に広めるためこつこつと買い続けていたが、先日ついに1,2巻の7セット目を購入。大体周囲に行き渡ったので感想でも書いてみる。


あらすじ
 20世紀末に起こった、オルタレイションバーストと呼ばれる時空変動現象によって、一部の人間及び動物は特撮ヒーローもしくは怪人に変身できる力を手に入れた。主人公・明超次はその中でも特に最強クラスの力『ジエンド』を手にしたので、その力を使って世界を守ることにしたのだ。


企画のヒーロークロスラインについて
 一つの世界観について複数の漫画家がそれぞれのヒーローを描く、というアメコミヒーロー物みたいな本企画。メインで関わっているのは本作の村枝賢一や、スプリガン原作のたかしげ宙などだが、同じ題材ながら人によってはバトルを書いたり、別の漫画家はギャグを書いたり、宇宙開発物を書いたりと、割とバリエーションが豊富で外れも少ない。ある作品の主人公が別の作品に登場したりするクロスオーバーも見所の一つで、企画スタートから半年ほど経ち、作品数も増えてきて今後の動向に期待しているコンテンツだ。


ジエンド
 ヒーロー物と言うか、能力物と言うのか。普通の人とは異なる力を手に入れた、ノッカーズと呼ばれる者たちをテーマにした漫画なのだが、『ノッカーズ』を描くのではなく、『ノッカーズの居る世界』を描いているのがこの企画の魅力だと思っている。
ノッカーズの存在は世間一般に広く周知されており、人々は好むと好まざるとこの異能力と付き合っていかねばならない。ある者はその力を使って犯罪に走り、ある者は人々を助け、ある者は普通の生活を守るため能力を隠して生きている。テレビは政治経済と並べてノッカーズ犯罪について語り、政府や警察はノッカーズ対策チームを組織する。
 要するにSFで、絶チルの特撮ヒーロー版である。もしくはデビルマンX-MEN。力を持たない者は隣人や家族がノッカーズではないかと怯え、ノッカーズとなった者も、その力を得た故に失われる物に恐怖している。人と自分が明らかに違う存在であることの悲哀や疎外感。社会の中におけるノッカーズという存在。個人的には異能力バトルよりも、そう言うところが丁寧に描かれていることが、このヒーロークロスライン全般の中で、『ジエンド』が頭一つ抜きんでている部分だと思う。もちろん、仮面ライダー関連に並々ならぬ愛情を注ぐ村枝先生だから、バトル方面の格好良さも洒落にならないものがあるんだけど。
 現在刊行されている1巻2巻で、ついに主人公が力を完全覚醒させる。他作品とのクロスオーバーも本格的に始まって、自分の中では今一番目の離せない作品となっている。