『屍鬼(1)〜(5)』小野不由美

ジャンプSQで藤崎竜先生が連載中の同タイトル漫画の原作。冒頭の二話で既に面白そうな予感がしていたので、1巻だけ買ってあった。

あらすじ。山に囲まれた閉鎖的な村で、不自然な死が起きる。それは最初あまりに小さな出来事であったため、村人の誰も気付くことはなかった。しかしその間にも死者は増え続け、一部の者が不審に思い始めたときには、事態は既にのっぴきならないところまで及んでいたのであった。



村を包む一つの事件を、たくさんの村人たち個人個人の視点で少しずつ描き続けていく形式の小説。この書き方じゃなけりゃ、文庫で全二巻くらいだったろうと思うが、個人的にマクロ視点でどうこう、と言う話が結構好きなのでかなり楽しんで読めた。
1巻を読み終えた時点では、まだ殆ど誰も事件に気付いていなかったのだが、ようやく膨大な登場人物たちの名前を覚え始めていたところだったので、忘れる前にと思って2巻を購入したのが運のツキ。そのまま3〜5巻まで一晩で読むという暴挙に出てしまった。十二国記あたりも読めばハマるのだろうか。でも十二国記ってタイトルからして威圧感が。三国志の四倍って、それはちょっと。


2巻3巻で、それまで村でも主要な人物たちしか気付いていなかったことに、普通の人々もそれぞれの立場と視点で違和感を感じ始めていくのが割と快感情だった。徐々に徐々に、収束に向けて何かが狭まっていく緊張感とかそんな感じ。その分4巻あたりはちょっと苛々が募ったかも。「もういい加減気付けよ」とか勝手な野次を、神視点で登場人物に飛ばしている自分がいたりして。一番核心に近づいている連中でも仲違いして、事態が進展しない状況なんぞは、作者も書いてて楽しかったろうと思う。


で、5巻で全ての何かが崩れ去るカタルシスは、ちょっと堪らないものがあった。何が嬉しいって、この快感をこの先もう一度、フジリューの漫画版で味わえると言う約束された喜びが待っているのが素晴らしい。色々な才能に有り難うと言いたい。(1巻の時点でも既に、一部のキャラは脳内でフジリューの描くビジュアルが浮かんでいたので、割と混乱せずに入っていけたんだと思う。案外、『さわりだけ漫画→原作』で、一番いいタイミングで原作を読んだのかもしれない)


屍鬼(一) (新潮文庫)

屍鬼(一) (新潮文庫)

屍鬼(二) (新潮文庫)

屍鬼(二) (新潮文庫)

屍鬼(三) (新潮文庫)

屍鬼(三) (新潮文庫)

屍鬼(四) (新潮文庫)

屍鬼(四) (新潮文庫)

屍鬼(五) (新潮文庫)

屍鬼(五) (新潮文庫)