『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』本谷有希子

あらすじ。「私は才能の塊なので女優になります」と言って上京していった姉が、両親の死をきっかけに一時帰省してきた。傍若無人な姉と、それに振り回される妹と、顔の怖い兄と、幸薄い兄嫁の四人の家族が織り成すハートフルストーリー。ハートフルというよりはソウルフルだけど。違いはよく判らん。
映画が酷く面白かったので原作も買ってあったんだけど、読まずに積んであった。読んだ。
読みながら、映画が原作をほぼ忠実に再現していたと言うことを知って驚く。もとのこの原作からして、映像にしやすい内容だったということだろうか。作者は劇団の人らしいし。
ただ、映画と原作では若干テーマが異なるように感じた。映画は「自分の才能の無さを受け入れられずもがく姉」と「溢れる才能があるために苦しむ妹」の対比を中心に据えていた気がするが、原作は「他人と違う自分を認めてもらいたい姉」と「姉の本当の素晴らしさを知っている妹」がメインだったような。両方とも題材は「才能」で、映画は「才能=目的」、原作は「才能=手段」のような。もう一度映画見直してみないと判らんけど。どっちにしろ、なんとなくG戦場ヘブンズドアっぽかったとは思った。
ラストシーンの残酷さと滑稽さはかなりお気に入り。映画ではこのシーンの意味に気付けなかった。映画見てた時はちょうどこの辺で舞台が地元だと言うことに気付いて一人テンションをあげていたせいだろうか。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)