『The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day』乙一


もちろん買わずにはいられない。杜王町で、康一君と岸部露伴が会話しているシーンを見るだけで幸せな気分になる。


読んだ感想としては「ほぼ完璧」といったところ。一人の荒木信者として、もしジョジョ4部の映画化がされた場合は、このエピソードを使ってもらっても構わない、と思えるくらいには。


敵のスタンド能力は、上手い事考えたなあ。作者のジョジョへの傾倒っぷりを如実に表現しながらも、作者が描かなければならない『小説で表現するジョジョ』にふさわしい能力だと思う。もし、漫画でこのスタンドが登場したとしても、あの最後の仗助とのバトルほどの臨場感が得られるとは思えない。小説家・乙一が自分のフィールドの中でもっとも活躍させられるようカスタムされたスタンド、といった感じ。
それでいて、描写として荒木エキスの再現度がかなり高いレベルであり、そして自分の荒木経験値も脳内に自在に荒木絵を再生させられる程度のレベルには達しているので、読んでいて物凄いドライブ感があった。文字の羅列を読んでいるのに、脳内に完璧にジョジョが再現されている。奇妙な体験をさせてもらった。いや、もう、最後の戦いの格好よさは異常。脱帽。


あと細かいこと

  • 革表紙をめくったところにある「荒木画・飛び出す杜王町」の、億泰が細くてビビる。康一君がえらくふてぶてしくて笑う。
  • 「今まで食べたパンの数」や「魔少年的な子」といった細かい小ネタの数々は、笑ったけど微妙な印象。筆がノリすぎた時の荒山徹先生的というか、同人誌っぽいというか。
  • 億泰は乙一に感謝すべきだと思う。本作内の億泰は、猫草を引っ張り出してたときあたり並みに輝いている。
  • トニオさんの料理を食べて、物凄い事になっている割には冷静な本作オリジナルキャラ・琢馬。鉄の男だ。
  • 全体的に、「情」の表現のやわらかさは乙一特有のものだと思う。荒木先生はもう少し硬質なイメージがある。
  • 最後のオチは賛否両論分かれるだろうが、個人的には認めたくない。もちろん、登場人物の運命の選択として、敬意は表するんだけど。荒木先生なら、最後にどんなオチを選ぶだろうか。


どうでもいいこと

個人的に昔から夢想していることがあって、本屋でのアクションシーンが見たいというもの。格闘でも銃撃戦でも超常決戦でもなんでもいい。
ぶつかりあって倒れる棚。飛び散るページ。その場に落ちている辞書で殴り、旅行誌を放り投げ、エロ本で防御する。KillBillのユマ・サーマンVSダリル・ハンナみたいな感じで、本屋を徹底的に破壊しまくる映像が見たい、という欲望。この小説を読んでいて、それを思い出した。


The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜

The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜